荻窪新聞 2013年10月3日
荻窪新聞

時代が見えてくる!

おもちゃから見る時代の移り変わり〜郷土博物館分館
 
おもちゃをじっと見つめてみてください。かつて日本が経験した激動の時代がみえてきませんか。一味違ったおもちゃの魅力を発見できるかもしれません。(杉並区立郷土博物館分館)
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 弁天池公園におもちゃを見に行こう!

 

 

夏も終わり、涼しくなってきた今日このごろです。

 

クスノキの茂る天沼弁天池公園でカルガモ親子の観察でもしようかと足を運んだ際に、ふっと杉並区立郷土博物館の分館の展示が気になったので見に行ってみました。

 

弁天池公園

 

杉並区立郷土博物館分館』は天沼弁天池公園の一区画にあります。

郷土博物館は、杉並区の郷土資料の収集・保管をはじめ、今回の企画展などの開催、調査・研究など様々に行っている施設です。

 

館内を覗いてみると、2階の展示室には昔のおもちゃがたくさん、年代別に分けて展示されていました。

 

オキュパイド ジャパンの企画展

 

 

─── オキュパイド ジャパンのおもちゃたち?時代が見えてくる!?

─── オキュパイドってなんだろう?おもちゃと時代がどう関係するの?

 

かわいいおもちゃたちが一体どうしたというのだろう?少し大袈裟なんじゃないか?

と、気になったので色々と見て調べてみることにしました。

 

 

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Made in Occupied Japan企画展

 

 

 

「オキュパイド ジャパンって何だろう?」

 

 

この名前、お宝を鑑定する某テレビ番組の中でお聞きしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。知る人ぞ知る、おもちゃコレクターなら垂涎のお宝なのです。

 

オキュパイド【occupied】とは、占領されているという意味であり、オキュパイド ジャパンというと「占領下の日本」を意味しています。

 

第二次世界大戦後、一時的にアメリカの占領下にあった日本のことを指しており、その当時の日本では、輸出品にはすべて[Made in Occupied Japan]の表記が義務付けられていたそうです。

 

戦後貧しい時代の日本では、おもちゃも大きな輸出産業のひとつだったのでしょう。輸出の拡大とともに日本の経済成長の一翼を担っていたことは間違いありません。

 

Made in Occupied Japan

 

この[Made in Occupied Japan]の表記、義務付けられていたのが1947年〜1952年のたったの5年間だけだったそうです。

 

こういった歴史的価値に加え、短い製造期間だったため希少価値が高いということもあり、コレクターの間では大人気なのです。

 

 

 

 時代が見えてくる?その理由とは。

 

 

ところで、なぜおもちゃを見比べることで『時代』まで見えてくるのでしょうか。

 

分館学芸員の秋山さんにおもちゃの歴史について詳しくご説明いただいたので、展示を交えて簡単におもちゃの歴史をご紹介していきたいと思います。

 

学芸員の秋山さん

▲ 杉並区立郷土博物館分館の学芸員、秋山さん。博識でなんでもご存知です。

 

今回の企画展では、1860年代の明治期から1960年代の昭和40年代くらいまで、約100年の間に製造されたおもちゃを年代別に分けて展示しています。

 

 

【明治時代〜】 

 

明治期のおもちゃ

▲ からくりの技術が生きている?かわいい見た目に加え、かなり精巧なおもちゃたち。

 

文明開化の明治期に作られたおもちゃは、輸入されたブリキ板や空缶などの廃品を再利用し、精巧な技術を取り入れた『ハイカラ』なものが中心でした。

 

 

【大正時代〜】

 

おもちゃ先進国のドイツが第一次世界大戦の戦渦によって被害を受けたため、日本のおもちゃ産業が代わって海外に進出するようになりました。

また新聞・映画などのキャラクターをモデルとしたマスコミ玩具が流行し始めたのもこの頃で、まさに隆盛期といえるでしょう。皆さんご存知のキューピー人形の多くもこの時代に生まれています。

 

 

【昭和初期〜】

 

大正時代のノラクロとベティちゃん

▲ 『のらくろ』と『ベティちゃん』。のらくろの作者・田河水泡さんは荻窪に住んでいたことも。

 

この時代から制作技術はさらに向上。素材も大きく進歩してセルロイド製品はゴム製品へ、そして金属へとおもちゃ産業は大きな進歩をとげています。

 

兵隊さんのおもちゃ

▲ 『肉弾三勇士』の人形。左と右の人形でそれぞれ持っている爆弾が違うところがポイントです。

 

一方、日中戦争が始まると輸出は減少してきます。おもちゃも軍国調のものが多く現れてきて、兵隊さんの勇姿をイメージしている玩具が登場してきます。

 

 

【昭和・戦時統制下〜】

 

統制下のおもちゃ

▲ 展示されている玩具には査定済みの証書が貼られているところに注目。

 

時代は満州事変から、やがて日中戦争、太平洋戦争へと突入します。

戦時中の物資不足の影響を受け、おもちゃも従来のブリキやゴムなどから木製や紙製・陶製へと変化を遂げています。

 

統制下の陶製のおもちゃ

▲ 陶製の人形。たすきには国防・愛国をうたう文字が。おもちゃはプロパガンダにも利用されていたそうです。

 

 

【終戦後の占領下日本】

 

占領下日本製品

▲ 当時米国でもカリスマ視されていたというマッカーサー最高司令官。人形にもなっています。

 

今回の企画展の中心、『オキュパイド ジャパン』の製品、おもちゃが展示されています。

 

戦後貧しい生活中、「生きるため」に多くの輸出製品が生み出されてきました。

戦時中の統制から一転、なんでも自由に作れるようになったことから華やかなものが目立ちます。

 

OJすごろく

▲ なかよしすごろく。アガリには「シンチュウグンノヘイタイサン ボクラトナカヨクシマセウネ」とあります。

 

 

【そして現在へ】

 

宇宙技術のおもちゃ

▲ ロケットや原子力発電所などのおもちゃ。未来への技術力に焦点が当たっています。

 

戦後を生きる人々の、ものつくりへの力強い歩みが日本を大きく成長させました。

同時におもちゃの素材や技術も大きく進歩し、おもちゃのモチーフとも大きな変化を遂げ、ロケットや宇宙を題材にしたものなど、『未来への技術』に焦点を当てたものが人気となりました。

 

 

 

 おもちゃから見る時代の移り変わり 

 

今回ご紹介したおもちゃはほんの一部ではありますが、激動の時代を生きぬいた人々とおもちゃの移り変わりが少しだけ垣間見れたのではないでしょうか。

 

是非とも皆さん、お散歩・息抜きがてらに実際に足を運んで見てみてください。

今まで見えて来なかった時代が、おもちゃを通して見えてきますよ。

 

オキュパイドジャパンの玩具

 

 

 

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分館企画展
時代が見えてくる!
オキュパイド ジャパンのおもちゃたち

 

場所:杉並区立郷土博物館分館 西棟2階展示室 杉並区天沼3−23−1(天沼弁天池公園内)
期間:平成25年8月17日(土)─ 12月1日(日)
開館時間:午前9時〜午後5時
観覧料:無料
休館日:毎週月曜日・毎月第3木曜日(祝日、休日の場合は翌日が休館)
問合せ:杉並区立郷土博物館分館 Tel:03ー5347ー9801

 

 

【講演会】

 

「 なぜおもちゃはうまれたの? 〜人類学からみるおもちゃの起源〜 」

講師:眞家和生氏(大妻女子大学博物館教授)
日時:10月20日(日)14時〜16時 開場13時30分

 

敗戦を抱きしめる 〜オキュパイド ジャパンの玩具〜 」

講師:高山文孝氏(イラストレーター・玩具史料提供者)
日時:11月3日(日)14時〜16時 開場13時30分

 

※ 各回ともに定員30名(直接会場にお越しください。先着順。13時30分より整理券を配布)

 

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企画展の資料の多くは高山文孝氏の所蔵です。

企画展内での撮影は禁止されています。今回は特別に撮影の許可を得た上で撮影しております。

 

(ライター・写真:松崎)